初見で「めぞん一刻」を見終えました。
とりあえず見終わった後の感動と余韻が凄くて、久しぶりに自分の感情をコントロールできないまま、当記事を執筆しています。
いやはや、やはり高橋留美子氏は天才であり化け物だなーと思い知らされた所存です。
というわけで今回はラブコメの古典にして傑作、「めぞん一刻」について大いに語らっていきましょうよ。
めぞん一刻とは
めぞん一刻とはボロアパート“一刻館”を舞台に、管理人の音無響子と住人である浪人生・五代裕作との日常や恋愛の葛藤を描いたラブコメディ漫画です。
ストーリーは至ってシンプルで、基本的には美人で気立てが良い管理人の響子さんに、ドジでお人好しな五代君が恋をし猛アタックするという話。
原作者は「らんま1/2」や「うる星やつら」の著者としても知られている高橋留美子氏。
余談ですが、流れで彼女の作品を一通り見て、「この人は手塚治虫氏に並ぶくらいウルトラヒットメーカーだな」と本気で思いました。
ラインナップがすべて銀河級。まさに天才と評するに相応しい漫画家さんです。
そんな天才が描いためぞん一刻は、実は30年以上も前の作品で、初刊発行からかなり時間を経てはいるものの、現在に至るまで廃れることなく語り継がれています。
ネット民に「いまだにめぞん一刻を超えるラブコメが出てこない・・・」と言わしめるほど、ラブコメ界の傑作として崇め奉られてます(笑)
各キャラに対する印象やプロフィールなど
ここからはめぞん一刻に登場する個性豊かなキャラ達を紹介していきます。
五代裕作
~データ~
本作の主人公であり、ボロアパート一刻館の5号室住人。
物語当初は大学受験に失敗した浪人生として一刻館に居住している。
性格は善良で器が大きいが、押しに弱く優柔不断。
一刻館に新しく来た管理人の音無響子に一目惚れする。
~印象~
五代君は一応モテない設定ですが、実際はめちゃくちゃモテてますよね。とりあえずそこが羨ましかった(笑)
モテてる層が普通とはちょっと違う女の子たちばかりなのはおそらく、彼が心から優しく、誰でも受け入れてしまうからでしょう。園児たちからも人気でしたからね。
そしてそんな五代君を見て自分も、こんな風に器のでかい人間になりたいなぁと心底思いました。特に墓前での独白はかっこよすぎでしょ。
現実だと間違いなく女性から見向きもされないですが、人間的に尊敬できる部分が多いキャラでしたね。
音無響子
~データ~
一刻館住み込みの管理人であり、本作のヒロイン。
五代裕作より2歳年上で、未亡人。
性格は基本的に穏やかで協調性を重んじるが、その反面嫉妬深く思い込みが激しい1面も。
その嫉妬深さが最も強く表出されたのは、おそらくピンク電話の回。あれは屈指の神回なので未視聴の方はぜひ。
ちなみに音無響子という名前は、音が無いのに響く子という意味があるそうで、高橋留美子氏の性格を反映したものだと本人が語っている。
~印象~
響子さんファンには申し訳ないけど、彼女は根っからの小悪魔です。
所々計算しながら生きている節があって、さらにそれを自然とやってのけるから余計質が悪い(笑)
そのすべてを説明していると長くなるので割愛しますが、象徴的なものを1つだけ挙げれば三鷹コーチのキープがそれをよく物語っている気がします。
響子さんが三鷹コーチをキープしていた理由については、五代君がダメだった時の保険だと私は考えています。
五代君が自分を諦めた時(線としては薄い)や、就職に失敗したり何か不測の事態が起きた時(有力候補)の予備だったのではないかと。
現に響子さんは三鷹コーチからの誘いや告白をハッキリとは断っておらず、自分から嫌われるような態度は取ってません。
とはいえあくまでも本命は五代君だし、おそらく三鷹コーチは性格的にタイプではないため、物語通して三鷹コーチを心から好きそうなそぶりも響子さんは見せなかった。
その結果三鷹コーチは、その生煮え状態を約7年ものあいだ味わい続けることになり、最終的には振られてしまいます。
(まぁ最後まで響子さんの心が自分に向いていないことに気づかなかった三鷹コーチにも非がありますけども)
そういうしたたかな振る舞いを自然とやってのける響子さんは、自分で気づいていない(たぶん)方の小悪魔です。
なんの悪気もなく多くの男を魅了して掌で転がす女性。
ただこう書くと聞こえは悪いですが、やっぱりそれも含めて響子さんの魅力であり魔性なんですよね。同時に良い所もたくさんありますし。
でもまぁ個人的には「おっかねぇなぁ」という印象でしたし、たぶん世の男たちも似たような感想を抱くかなという気がするので、
やっぱり彼女の面倒くささだったりバックボーンだったりを真正面から受け止めてあげられるのは、三鷹コーチではなく五代君くらいしかいなんじゃないかなーという気もしてます。
憎めない恋敵たち
三鷹コーチ
~データ~
五代君の恋敵。普段はテニスクラブのコーチをしている。
容姿端麗でスポーツ万能、1流大学を卒業し実家は金持ちと、ザ・パーフェクトヒューマン。
性格は積極性がありさりげない気遣いも出来、誰に対しても紳士的。現実にいれば9割の女性から惚れられるモテキャラ。
~印象~
響子さんの印象で語ったようにこの人は「ほんとかわいそうな役だったよなー」という感じ。
現実では三鷹コーチのような男性は9割方の女性から好かれますし、作中でもモテるので彼は自分に自信を持っています。
でも、響子さんが求めている男性は彼のような自信家ではなく、惣一郎さんのような温かい男性です。
だから響子さんは例外なんだということに彼が気づき、早い段階で諦めて別の人に行っていればきっとこんな結果にはならなかったでしょう。
こればかりはフィクションということで仕方がありませんが、本作を最も盛り上げてくれた人物だということは忘れてはいけないでしょう。
七尾こずえ
~データ~
五代君のガールフレンド?
過去に五代君と同じバイト先だったことをきっかけにこずえからアプローチし、交際をスタートさせる。
性格は掴みどころがなくどこか抜けているような印象を与え、一言で言えば不思議ちゃん。
~印象~
こずえちゃんも三鷹コーチと同様、完全な引き立て役として物語を完走したキャラクターです。
可哀そうだと感じる場面も多かったですが、こずえちゃんの場合は彼女の性格に救われたような気がしますね。いい意味でも悪い意味でも自分の世界があって深刻にならない感じというのか、、、
加えて途中から全く登場しなくなったり、八神さんにポジションを奪われたりもしてて存在感が薄くなっていたのも軽減された要因ですかね。
管理人的には女性キャラの中で1番好きでした。あのふわふわしてて天然が入ってる感じは、見てて癒されます。
八神いぶき
~データ~
五代君が教育実習を行ったクラスの学級委員長。
実習に来た五代君に惚れ、長い間五代君を追いかけ続ける。
クラスを率先し成績優秀、容姿端麗と優等生ポジにはいるが、性格は優等生のそれではなく、破天荒で思春期特有の危うさを持ち合わせており、過信と向こう見ずからたびたび問題行動を引き起こす。
強いて言えばエヴァのアスカに似ているような感じがする。
~印象~
八神さんは基本的に思ったことは堂々と言い、あやふやなものは白黒はっきりさせたがる性格に加え、思春期特有の「後先どうなろうと関係ない」精神を持ち合わせた非常に危ういキャラです。
そんなニトロ爆弾のような彼女は、従来の日本人には「生意気だ」と思われるか「自分の考えを持っていてかっこいい」と思われるか、大体好きか嫌いかがはっきりと分かる人物でしょう。
私的には自分にないものを持っている彼女は面白いと感じ、社会に出てどうなっていくのかが楽しみだったりします(叶いませんが)。
また自分の欲望に真っすぐな分、望んだものを手に入れる際に最も力を発揮するタイプだとも思いました。
作中ではあいにく五代君を手に入れることは出来ませんでしたが、キャラクターの中で最も「物語終了後のその先」を見たかった人物かもしれません。
音無惣一郎
~データ~
響子さんの亡夫。生前は女子高で地学の講師を勤めていた。
響子さんとは女子高講師時代に出会い響子さんの卒業を待って結婚するが、半年も経たないうちに他界。
響子さんと結ばれたいと考える五代君にとって彼は大きな存在であり、最大の恋敵となる。
また、響子さんにとっても惣一郎さんは死別した後も忘れることができない大切な存在。
そのことから分かるように、惣一郎さんは物語における大切なピースを握っている人物だと言える。
~印象~
惣一郎さんはメイン2人にとってのキーパーソンだったにも関わらず、作中では顔すら登場せず、印象を語るに語れません。
タイプ的には五代君に近いのかなという感じはするものの、それ以上の情報はほとんど出ていなかったと記憶しています。
なので、これといった印象は特にありません。
味のある賑やかしたち
一ノ瀬花枝
~データ~
一刻館1号室の住人。
普段は主婦をしており旦那さんと息子(賢太郎くん)もいるが、登場回では大体四谷さんと朱美さんと一緒に酒をしこたま呑んで乱痴気騒ぎしている(笑)
性格は詮索好きな典型的おばちゃんだが、いざという時メイン2人の相談に乗ってくれる頼れる存在。
~印象~
賑やかし3人衆の1人ですね。
とりあえず一ノ瀬さんについて思うことはですね、「そんなに酒ばっか飲んでて家庭大丈夫なの?」ってところ(笑)
他の2人には家族がいないのでこんなことは思わないですけど、一ノ瀬さんの場合はちゃんと家庭があります。旦那もいるし息子もいる。
だから少しだけ「家庭と両立できてるのだろうか・・・」と見ててそこがちょっと気になりました。
ただまぁ、賢太郎君が立派に育っているのが救いかなーと。彼は一刻館唯一の常識人なので。
四谷さん
~データ~
一刻館4号室の住人。
謎多き人物で、職業や年齢などパーソナルなデータは一切不明。
性格も掴みどころがなく、強いて言えば五代君にちょっかいを出したりたかったりするのを楽しみにしている節がある。
物語が終わるまで本心を見せることは1度としてなく、最後まで何を考えているのかが良く分からなかった。
そんな四谷さんは、物語を1番間近で楽しんでいる傍観者というのに相応しい人物だろう。
~印象~
四谷さんは誰かにこれといった影響を与えることもなく、出しゃばって存在感を強めることもなく、終始一貫して傍観者でした。おそらく物語を1番近くで楽しんでいたのも読者でなくて彼なのでしょう。
その見事なまでに徹底した傍観者っぷりは、ある意味1番親近感を感じつつも羨ましく思えてきます。
なぜなら、我々の多くが現実的には四谷さんのようなポジションにいるからです。
残酷なようですが、皆が皆、主人公にはなれません。自分の人生の主役は間違いなく自分なのですが、集合体においての主役は違いますし、そもそも主役なんていない可能性だってある。
それを踏まえて彼を見ていると、非常に親近感を感じてきます。
加えて羨ましさを感じるのは、そんな傍観者である四谷さんでも名前と役割を与えられ、モブキャラとは一線を画しているからです。
ストーリー上にはちゃんと存在していて、時々メインに絡む。大きな活躍は期待されない代わりに深くは追求されない。
これって結構おいしい役割だと思いませんか?
このように一見すると影が薄い四谷さんですが、意外と奥深いキャラだということが分かって面白かったです。
というか、もしそれを見越して四谷さんを登場させたのだとしたら、高橋留美子氏は凄いを通り越して怖さすら感じますけど^^;
六本木朱美
~データ~
一刻館6号室の住人。
スナック「茶々丸」に勤めている。一刻館では一ノ瀬さん四谷さんと共に乱痴気騒ぎをするメンバーの1人。
性格はだらしがなくハチャメチャなものの、メイン2人をフォローする人情味あふれる優しさも持っており、やんちゃな姉御的存在。
~印象~
朱美さんは多くの男性からモテるでしょうね。
色っぽいのに実はガードが堅そうな感じとか。バカっぽいのに実は色々考えているとことか。
朱美さんはマイナスからプラス要素へのギャップが強いキャラだと思うので、彼女に魅了された男性ファンはきっと少なくはないでしょう。
彼女も物語に味を出している賑やかし御三家の1人です。
視聴したうえでの個人的感想
キャラ紹介も済んだので、本作を一通り見て思ったことをそのまんま書き殴っていきましょう。
ヤキモキが1番のフック
本作の主役である五代君とヒロインの響子さんは、いつまで経ってもくっつきそうでくっつきません。
くっつきそうだと期待して見ていたら必ず障害が現れて裏切られるし、かと思ったらふとした瞬間にグッと距離が縮まる。
そのヤキモキさせる感じが非常に絶妙で、「早く終われよ」とツッコミつつも、「いつまでも見ていたい」「ずっとこのままいたぶり続けてくれ」と相反する2つの想いが巻き起こって、感情をぐちゃぐちゃにしてくれます。
じゃあなぜこんなにもヤキモキするのかと考えてみると、それはひとえに響子さんの外見と性格によるものだということが分かります。
響子さんは男の理想像みたいな女性であり、だからこそ女性特有の面倒くささを孕んでいる。
(ちなみにこれをかわいいと言える男はモテるだろうなぁ。自分は余裕で面倒くささの方が勝つけど笑)
ナイスボティ。美人。気立てがいい。おしとやか。嫉妬深い。構ってちゃん。我が儘。意外と気分屋。
とまぁ一言で言ってしまえば響子さんはこんな風に強烈な女性性を持っているキャラなんですよね。
ちなみに男性性と女性性について補足しとくと、
男は自分にない女性性という特性を女に求め、女は自分にない男性性を男に求めます。
人は自分に無いものを欲しがる生き物ですから。
逆に自分が持っている特性を異性の中に感じると人は違和感を覚えます。
その証拠に男は自立した雄々しい女が嫌いで、女は自立出来ていない女々しい男が嫌いでしょ。前者は同性からは憧れられますが、異性からの受けは悪い。後者は同性ならついつい甘くみてしまいますが女性人気はない。
そんな感じで男性性と女性性は男女にまつわる興味深い特性です。
で話を戻すと、その女性性がびっくりするくらいよく描かれているからこそ、世の男性はいつの間にか彼女の虜になっているわけです。
言ってしまえば響子さんは超女っぽい女性なんですよ。
そして間違いなくそんな響子さんの存在がこの物語のフックであり、視聴者(主に男性視聴者)をラストまで向かわせる求心力になっているのだろうなと思います。
ノスタルジックな世界が舞台
めぞん一刻がリリースされたのが30年前ということで、本作の舞台も世界観も非常に懐かしさを感じさせるものとなっています。
特に4,50代の方はドンピシャ世代ということもあって、実際に見返す人が多いと聞きました。
世代によって多少感じ方に違いはあるでしょうけど、アラサーの私が見ても同じように懐かしさだとか、なんとなく愛おしさもあり切なくもなるような感情を抱きましたね。
「古い作品だからだろ」と言われればそれでお終いですが、たとえフィクションであろうと昔の日本の雰囲気を知れるのはめぞん一刻の良さだと思います。
中でも個人的に衝撃だったのは、めぞん一刻が描かれたころの時代では五代君が暗いやつだと認識されていたことですね。
五代君はどこにでもいそうな青年ですが、作品を見てて暗い性格だとは微塵も思わなかったし、今の時代の若者に当てはめてもザ・普通っていう感じがします。
だから暗いやつ扱いされているのは違和感を覚えたし、「ああ、この頃はこれで暗いと言われていたのか」と時代のギャップを感じて面白かったです。
作中ではそういう時代の溝みたいなのはちょくちょくあるので、今とどれだけ違うのかを比べてみるのも楽しみ方の1つとしてはありだと思います。
とにかくノスタルジー色がだいぶ強めなのもめぞん一刻の特徴であり良さです。
ラブコメ漫画の傑作と言われるゆえん
ここまでめぞん一刻についての諸々を書いてきましたが、最後にめぞん一刻がラブコメ漫画の傑作だと言われているゆえんを解説して締めくくりとさせて頂きます。
めぞん一刻がラブコメの傑作だと言われるゆえん。
それは、、、
ラブコメの基本をしっかり押さえつつも、作者の才能がいかんなく発揮されているから。
まぁこんな大々的に発表するようなレベルの考察ではないんですけどね(笑)
で、話の続き。
めぞん一刻は、ラブコメの基本を忠実に守っている作品です。
ヒーローとヒロインが互いに想い合いながら少しづつゴールへ向かっていく。時には喧嘩をしたり時には恋敵に邪魔をされたりしつつ、それを乗り越えて愛を育んでいく物語。そこには笑いのエッセンスも少々。
めぞん一刻のストーリーを説明するとしたらこれだけで、非常にシンプルですし、基本通りのラブストーリーです。
実際、見ている途中も「展開がありきたりで読めてしまうなぁ」と感じたし。
それくらい物語はよく言えば基本通り、悪く言えばありきたりなものでした。
では、そのありきたりな物語を傑作に押し上げているものはなにかと言えば、それはやはり作者の力量だとしか考えられません。
特にキャラクターの作り方や動かし方がべらぼうにうまく、生み出されたキャラクターは漏れなく魅力にあふれています。どのキャラを取ってみても決して1面的になっておらず、そのキャラ独特の背景だったり奥行きだったりを感じさせられます。
残念ながらその魅力がどうやって生まれているのかを解説するだけの洞察力が私にはありませんが、少なくともキャラクターが魅力的だと作品が勝手に面白くなるということだけは確実に言えます。
小説を書く際などはよく「物語よりキャラクターを作り込め」と聞きますしね。
もちろんストーリーが魅力的な名作も世の中には数多くあるんですけど、めぞん一刻の場合は間違いなく魅力的なキャラクター達によって下支えされている作品です。
というわけでめぞん一刻が傑作たる所以は、
ラブコメの基本を押さえてるから安心して見れるんだけど、ただそれだけじゃなく、生み出されたキャラクターによって奥行きも感じさせられる。
のだと思います。
言葉にするとチープで簡単ですが、それを意図して作り出した高橋留美子氏はやはり天才だなと感じずにはいられません。
何にせよめぞん一刻は単純に面白い作品なので、未視聴の方はぜひご覧いただければなと存じます。
今ならHuluで視聴可能です。
てことで以上。 駄文失礼。