本は結構読む。小説は時々読む。その中でもミステリーとホラーは好んで読む。
という読書傾向を持った管理人が、今回はおすすめのミステリー小説を15冊ほど厳選して紹介していきます。
ただ最初に断っておくと今回紹介するもののほとんどは定番作品なので、「コアなミステリー作品を読みたい!」という方のお力にはなれないかと。
それでもいい、もしくはその方がいい。という方のみお読み進め下さい。
十角館の殺人/綾辻行人
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける(Amazon)
綾辻さんの館シリーズの記念すべき第1作にして、最高傑作との呼び声も高い本作。また、ミステリー好きがこぞって評価する稀有な作品でもある。
僕が十角館を読んだのは確か高校生の時だったと思いますが、その時の衝撃を今でも思い出せるくらいには衝撃的な作品です。
「十角館の殺人」はもちろんトリックが秀逸なのは間違いないんですが、トリック以外にも多くの魅力を放っている作品でして、例えば読者をぐんぐん物語に引き込ませるリーダビリティの高さだったりとか、登場するキャラがしっかりキャラ立ちしていたりとか、ミステリー要素だけではなく複合的に見て優れた作品だと思います。
だからこそミステリーはあまり読まないという方にぜひ読んで欲しいですね。読んどいて損はないかな。
ちなみに本作はアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」から構想を得て書かれたそう。ちなみのちなみに「そして誰もいなくなった」も読みましたけど、「十角館の殺人」の方がエンタメ寄りなのかなといった印象。
ハサミ男/殊能将之
ハサミ男
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作!(amazon)
ネタバレなしでこの作品の魅力を伝えていくのはぶっちゃけると難しいのですが、まぁそれでも説明するとしたら本作の魅力は圧巻の叙述トリックです。最後にウォォォ‼ってなるやつ。
本来なら叙述トリックと言ってしまうとこれから読む人は身構えてしまって作品の良さが半減してしまうことになり兼ねないので、それすらもここに書くべきではないのでしょうが、ハサミ男はそれを承知で読んでもらってもおそらくその期待を裏切ってくれるでしょうからまぁ大丈夫w
そんなハサミ男はあらすじにあるように精緻にして大胆なトリックが仕掛けられています。初版発行からだいぶ年数が経っているものの、トリック自体だったり、そのトリックに至るまでの伏線の張り方だったり筆運びだったりが見事でして、廃れることなく現在まで読み継がれている名作だったりします。
イニシエーション・ラブ/乾くるみ
乾くるみ 文藝春秋 2007年04月
「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。僕がマユに出会ったのは、人数が足りないからと呼びだされた合コンの席。理系学生の僕と、歯科衛生士の彼女。夏の海へのドライブ。ややオクテで真面目な僕らは、やがて恋に落ちて……。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説──と思いきや、最後から二つめのセリフ(絶対に先に読まないで!)で、本書はまったく違った物語に変貌してしまう。(amazon)
一度映画化されているので知名度が抜群に高い作品だと思います。ただ、映画は見たけど小説は読んでいないという方に特に読んで欲しい。
もちろん映画は映画でいいのでしょうけど、やはり活字で読むからこその良さがあって、その醍醐味を存分に味わえるのがこの作品のような小説だと思うわけです。それにこの手法は読み手の想像力をてこの原理で跳ね返して利用する力学みたいなもんで、想像力を有する人間のみが味わえる快感なんですよね。
そうなってくるとやっぱり、想像力というスパイスをフル活用できる活字版がベストなのかなと。
という風に、さも映画が駄作ってことを暗に示している風に書いていますが、管理人は映画を観ていません。悪しからず。
ただ一つ言えるのは小説は最高ってこと。
仮面山荘殺人事件/東野圭吾
8人の男女が集まる山荘に、逃亡中の銀行強盗が侵入した。外部との連絡を断たれた8人は脱出を試みるが、ことごとく失敗に終わる。恐怖と緊張が高まる中、ついに1人が殺される。だが状況から考えて、犯人は強盗たちではありえなかった。7人の男女は互いに疑心暗鬼にかられ、パニックに陥っていった……。(Amazon)
「仮面山荘殺人事件」は東野圭吾さんの初期の作品。
本作はまず何と言ってもテンポが良くて読みやすいですし、クローズドサークルものといって、外界との通信手段を絶たれた状況で事件が発生する形式なので緊迫感があっていいです。
レビューを読む限り賛否両論ハッキリ分かれていますが、ミステリーに興味があるのなら読んでおきたい作品です。
あの仕掛けは個人的にはめちゃくちゃ大好物でした。
13階段/高野和
無実の死刑囚を救い出せ。期限は3ヵ月、報酬は1000万円。喧嘩で人を殺し仮釈放中の青年と、犯罪者の矯正に絶望した刑務官。彼らに持ちかけられた仕事は、記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすことだった。最大級の衝撃を放つデッド・リミット型サスペンス!(Amazon)
高野和明さんの「ジェノサイド」が圧倒的すぎて勢い余って読んだのがこれ。結果、控えめに言っても最高でした。
何がいいってこの作家さんの描写力ですね。まさに技巧派って感じで、やれ人間を書くのが上手いわ、やれ状況を説明するのが上手いわで、イチイチ作家の凄さを見せつけられた気がします。元々作者は映画の世界にいた人らしいのでそれが大きく関係しているんだろう。
厳密に言うとミステリーではなくてサスペンスですが、傑作なのは間違いないため紹介します。
ジェノサイド/高野和明
急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。(Amazon)
本作は超大作と言っても過言じゃないほどの作品です。それを物語るかのようにページ数がそもそも半端じゃなく多いし、扱っているテーマが多岐にわたりすぎているし、色んな賞をかっさらっている。
色んな意味で後世に語り継がれていく超大作だと思います。
ただ僕なんかは読んでいる途中に「読むんじゃなかったわ」と後悔したことも事実で、要するに全然エンタメ向けの小説じゃないんですよね。
丁寧に書こう。ちゃんと書き切ろう。が先行して学術書みたいな印象を受けることもしばしばあった。
だから途中で何回か挫折しそうになったし、実際積読のまま放置していた期間もあったw
でもそこはやっぱり作家さんで、ラストはその印象を一瞬で吹き飛ばすほどの衝撃があります。
そりゃあここまで長くなるよな。最後に持った感想です。
ZOO/乙一
最も注目される若手ナンバーワン、乙一のホラー短編集。毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰? 「犯人探し」に奔走する男を描く表題作ほか、書き下ろしを含む全10編を収録。(Amazon)
乙一さんの作品は何作か読みましたが、その中だとダントツでおすすめな作品です。
何なんだこれは。と北上次郎氏が帯にも書いているように、本作はジャンル分けが非常に難しい作品だと思います。ただミステリーではない気もする。でも面白いから紹介する。(一応本格ミステリ大賞を受賞している作品だったりする)
そんな「ZOO」は短編小説で、僕の好みだけでいうと、表題の「ZOO」と「カザリとヨーコ」と「SEVEN ROOMS」辺りが好きだったかな。
特に「SEVEN ROOMS」の発想力が半端じゃなくて、その発想力をおかずに白飯3杯はイケる。意味わかんないけど。
ぶっちゃけると「SEVEN ROOM」を読むためだけに「ZOO」を買ってもいいレベルで、短編という括りだけなら個人的にベスト3に入るストーリーでしたね。
秘密/東野圭吾
運命は、愛する人を二度奪っていく。
自動車部品メーカーで働く39歳の杉田平介は妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美と暮らしていた。長野の実家に行く妻と娘を乗せたスキーバスが崖から転落してしまう。 妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。 その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。 外見は小学生ながら今までどおり家事をこなす妻は、やがて藻奈美の代わりに 新しい人生を送りたいと決意し、私立中学を受験、その後は医学部を目指して共学の高校を受験する。年頃になった彼女の周囲には男性の影がちらつき、 平介は妻であって娘でもある彼女への関係に苦しむようになる。(Amazon)
中学生の頃に読んだっていうのもあるけど、ここまで読後に嗚咽して泣いてしまった作品は今のところない。それくらいオエオエしたし、何ならゲホゲホすらした。
物凄く重たいテーマを扱っていてて若干の取っつきにくさはあるものの、それをさらりと書いてしまう東野圭吾なので読後は意外とさっぱりとした気分になります。
タイトルにあるように本作の”秘密”についてはあれを額面通り受け取れば地獄のような展開になってしまうけど、僕は感動的な展開だったと思いたい。
涙腺がバカになること間違いなしでしょう。
アヒルと鴨のコインロッカー/伊坂幸太郎
大学入学のため引っ越してきたアパートで、最初に出会ったのは黒猫、次が悪魔めいた長身の青年。初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。標的は――たった一冊の広辞苑。僕は訪問販売の口車に乗せられ、危うく数十万円の教材を買いそうになった実績を持っているが、書店強盗は訪問販売とは訳が違う。しかし決行の夜、あろうことか僕はモデルガンを持って、書店の裏口に立ってしまったのだ! 四散した断片が描き出す物語の全体像とは?(Amazon)
「アヒルと鴨のコインロッカー」に限らず、伊坂幸太郎さんの小説はどれを読んでもハズレがない。言い方は悪いかもしれないですけど、80点台の作品をコンスタントに発表する作家さんっていうイメージが僕の中である。
でも、120点の作品を1作だけ出して・・・みたいな作家が多い中でそれってめちゃくちゃ凄くて、プロフェッショナルに仕事をこなす人って感じがしますね。
そんな伊坂作品の特徴は、登場人物が自由自在に作中を独歩する立ち回り方だったり、知性的かつウィットに富んだ会話劇だったりします。
伊坂作品のキャラはどいつもこいつも颯爽と作品世界を動き回る身の軽さみたいのを備えていて堅苦しい印象を一切受けないし、それが伊坂作品の独特の雰囲気を作っているような気がします。
また、キャラが口にする言葉がイチイチお洒落で読み手はついそれに酔いしれてしまうし、次はどんなことを言うんだろう?って気になってくる。その辺が伊坂幸太郎さんの持つ作家性だと思います。
なんか作品自体の紹介とは関係なくなってしまった気がしますけど、本作はそんな伊坂幸太郎の良さもありつつミステリー要素の強い作品でもあるので、未読の方は是非読んで欲しいなと。
ついでに。陽気なギャングシリーズ+ゴールデンスランバー
陽気なギャングはギャング集団のやり取りが肝であり魅力。伊坂幸太郎の真髄を間違いなく味わえるシリーズです。
ゴールデンスランバーもキャラの魅力が半端じゃないし、それに加えスピード感が演出されてていいです。
詳しい感想はこちら。
葉桜の季節に君を想うということ/歌野晶午
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。(Amazon)
読み終えた瞬間「おお、そうきたか!」と思わず唸ってしまった作品です。
その手があるのね。って意味でまず驚くし、伏線の張り方が見事なのでもう一度驚くみたいなちょっと他の作品では味わえない読後感があります。
ドタバタあり、恋愛要素あり、疾走感ありのド定番ミステリー小説。
密室殺人ゲーム/歌野晶午
〈頭狂人〉〈044APD〉〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。奇妙なニックネームの5人が、ネット上で殺人推理ゲームの出題をしあう。ただし、ここで語られる殺人はすべて、出題者の手で実行ずみの現実に起きた殺人なのである……。リアル殺人ゲームの行き着く先は!?歌野本格の粋を心して堪能せよ!(Amazon)
葉桜の季節と並んで歌野晶午さんの代表作の一つ「密室殺人ゲーム」。
この作品は登場人物の不思議な魅力と、殺人トリックを犯人がネットで問題形式にして他のプレイヤーに出題するというシチュエーションに支えられた作品でして、他とは一線を画したミステリー小説の中でも異質な小説です。
とりあえずどの登場人物もキャラ立ちしてていいんですけど、管理人は特に<頭狂人>が好き。
登場人物達はどいつもこいつも殺人をネタにクイズを出して楽しむという、まさに頭狂人集団なのですけど、どっかで憎めないというか感情移入できてしまうところもあってページを読む手が止まらなくなりましたね。
トリックが秀逸なのは言わずもがなですが、それ以外の部分でも十分に楽しめる作品でしょう。
少女/湊かなえ
親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く──死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。(Amazon)
湊かなえ作品を個人的にオススメするとしたら「少女」ですね。いや「告白」や「リバース」も面白いんですけど、他所で紹介され過ぎてて僕自身もおそらく皆さんも食傷気味だと思ったんで。
で、もちろん湊さんの作品ってことで前2作同様「少女」も読後はすごく嫌な気分になります。病みつきになるような不快感がある。さすがイヤミスの女王。
に加えて「少女」は色々湊さんの作品を読んだ中で1番本格ミステリーっぽいしプロットがしっかりしていて伏線の回収が見事なんですよ。だから個人的には最も推したい作品です。
「告白」「リバース」辺りを読んで、次どれにしよっかな?ってお悩みの方は是非手に取って欲しい。
殺戮に至る病/我孫子武丸
永遠の愛をつかみたいと男は願った―。東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔!くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。(Amazon)
「殺戮に至る病」はおそらく今まで紹介してきた作品の中で最も問題作だと思います。何となくタイトルだけでもお分かりではないかと。
で、何が問題かって、そのグロさ。そこまで詳細に書かなくてもいいだろってレベルでグロシーンの描写がなされていますし、それがずっと続く。
なのでてっきりホラーなのか?と思ってしまうんですけど、ちゃんとミステリーとしても機能している。機能しているし謎の部分がかなり優秀という。
全くもって困ったやつ(笑)
まとめ
本当はまだもうちょっと紹介したい作品があった気がするんですけど、思い出せないので今回はこのくらいにしておきます。
何かの拍子に思い出せたらどんどん追記していく予定なので、その際はまたよろしくお願いしますね。
というわけで以上。