ベーシックインカムって言葉はたまに聞くと思うんですけど、どういう制度なのか分からないって人、意外と多いのではないでしょうか。
かくいう僕も興味を持って色々調べてみるまでは、漠然としか理解していませんでした。
でも気になって調べていくうちに、ベーシックインカムが現状を変え得る制度であること、面白い仕組みをしている制度であるということを知りました。
そこで今回は、調べる前の僕のように「ベーシックインカムが何なのかよく分からん」という人に向けて、ベーシックインカムの基本的な仕組みを説明してみようかなと思います。
- ベーシックインカムとは?
- 過去のBI
- 諸外国のBI事情
- 共産主義との違い
- ベーシックキャピタルとの違い
- メリット
- 分かりやすい
- 行政にかかるコストが削減される
- 全国民に無条件で納付される
- 生活保護不正受給がなくなる
- ブラック企業が減る
- AIとの相性がいい
- 地方に移住する人が増える
- 家族が多いほど得をする
- デメリット
- 労働意欲の低下や働かない人が出てくる
- 寿命によって損する人が出る
- 増税される可能性がある
- 移民問題
- 年金問題
- 病気になったとき
- どこからお金を集めるか
- 集められることが出来たとして継続できるか
- より正解がない社会になる
- BIについて個人的に思うこと
- BIはこれからの時代に適合するシステムであるとともに、仕事の在り方を大きく変える制度である
- 試験的にやってみる価値はある
ベーシックインカムとは?
BI(ベーシックインカムのこと。以下省略)とは最低限所得補償のことで、定まった期間に給付条件なしで、国民に一定額支給されるという特徴をもった政策構想です。
こう言うと少し分かりにくいですが、要は毎月なり毎年なり、まとまったお金を所得の一部として国から受け取れるという制度です。
そんなBIですが、基本的には生活保護や障がい者保険などのセーフティネットと同じ部類の制度だとお考え下さい。
ただBIが導入されれば今までの社会保障制度は撤廃になって、生活保護も年金制度もBIに置き換えられて一本化されるというわけです。(財源を他からもってくるなら別だけど)
そして、 ベーシックインカムと一口に言っても、定義の仕方は国や人によってさまざま。
毎月給付するのか、それとも毎年度にするのか、もし毎月(毎年)にするならいくらにするのが適当か、額が決まったのならそのお金をどこから算出するか、など色々あるでしょう。
もしBIを掲げる人間、もしくは党がいた場合、この定義がどのくらい現実に適っているのかを見るとその是非を判断しやすいと思います(金額だけで言えば、だいたい4万円から12万円の間で議論される多い)。
それでいうと希望の党がBIを公約として掲げていたのは記憶に新しいですが、有識者から批判を食らってしまいましたよね。
あれは何故批判されたのかというと、希望の党がBIを公約として掲げたにも関わらず、その具体的な構想を全く説明しなかったから。要は、「薄っぺらいマニュフェストを掲げて国民を扇動するな」ということなのでしょう。
というように他の制度同様、どこまで考え抜かれているかが大事になってきます。
過去のBI
BIは比較的新しい制度のように思われていますが、その歴史は意外と古くて200年以上前からその考え方はありました。
1970年代にはアメリカのニクソン大統領が提唱するも叶わず。未だ実現されたことはありません。この辺のことは、BIの啓蒙書として知られている「隷属なき道」という本に色々詳しく書かれているので、興味がある方はご覧ください。
また、アメリカなどで制定されている勤労所得税額控除や、既存の社会保障制度と並行して最低限所得補償としてBIを採用する構想などは部分的BIと考えることが出来ます。
部分的BIとは読んで字のごとく、部分的に国民の生活を保証するやり方。
ちなみに社会保障を全面的にBIに変えるやり方より、この部分的BIを取り入れた方が日本ではうまくいくと考えている人もいます。
ちなみのちなみに、勤労所得税率控除はアメリカだけでく、イギリス、フランス、オランダなど世界10か国以上で採用されているそうです。
詳しくはこちらに。
諸外国のBI事情
現行の制度ではうまくいかなくなってきたということで、諸外国ではBIが議論されたり、実験的に取り入れられたりしています。
それでいうと、スイスでBIの導入が否決されたことは耳にしたことがある人も多いはず。内容は月に大人約27万円、子供約6万8千円で支給されるというものでしたが、反対が76.9%で結果否決されました。
否決された理由は、労働意欲の低下やBI目的で移民が増えるということを懸念してらしいです。
スイス以外だと、フィンランド、オランダ(ユトレヒト)、イタリア、ウガンダ、ケニア、アメリカ(カリフォルニア)、カナダ(オンタリオ)、インドなどは既に実験的にBIを導入しています。
※国全体で取り入れているところは今のところなく、上記の国はどこも地域などの一部で実施している
ただどの国や地域にしても、実験としての意味合いが強いですけどね。
中には企業や非営利団体がBIを実験的に実施しているところもあって、その研究結果いかんによっては、もっと大規模な範囲で導入が検討されるかもしれません。
共産主義との違い
国民全員に一律給付という形は、ともすれば共産主義のように見られることがありますが、共産主義とは違います。
大きく違っている部分は2つあって、まず一つ目は、無条件で給付されるという点です。
BIが給付される条件は言うなれば、その国の一員であり、なおかつ生存していることが唯一の条件と言えるので、共産主義のように生活を保障してもらう代わりに国に人が管理されるということはありません。
国がロケットを作りたいといっても、協力する必要はないわけです。
もう一つは資本主義や自由主義経済で行うことを前提としている点。
要は、稼ぎたい人は稼ぎたいだけ稼げばいいけど、ほどほどでいい人は最低限の保証でやってくださいよということ。
よって、共産主義とは目指しているところが根本的に違います。
ベーシックキャピタルとの違い
ちなみに、BIと似た制度にベーシックキャピタルというものがあります。
ベーシックキャピタルはイングランドの思想家トマス・ペインによって構想されたもので、成人した人間全員にまとまった額を一括で支払い、老後にその額と同等もしくは定まった額返却させるという制度です。
もし返却できなければ年金から差し引いたりすることで調整します。
イメージとしては奨学金制度に近いですかね。資本力のない若者に支給することで、将来に役立ててもらうことを目的としています。
もちろん使い道は自由なので、無駄にする人と有効に使う人に分かれるでしょうが、より優秀な人材を育てるという観点から言えば、面白い制度だと僕は思います。
正確にはベーシックインカムと主旨の違う制度ですが、派生させてこんな制度もあるよってことで覚えておいても損はないでしょう。
BIの概要はこれくらいにして、以下からはBIのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
分かりやすい
BIは何と言っても構造がシンプルという利点があります。
煩雑な手続きは必要ないし複雑な計算も要しませんので、非常にクリアな制度と言ってもいいでしょう。
例えば、年金制度は3階建て構造になっていますよね。国民年金と厚生年金、それに加え企業年金という3つの柱から年金は成り立っています。
で、皆さんその3つの年金の加入条件や違いって分かりますかね?調べずにw
僕は正直、調べながらでないとよく分かりません。国民年金と厚生年金は何となくわかりますが、企業年金に関してはさっぱりです。
それはもちろん僕の勉強不足ということもありますが、まずこの年金の構造がややこしいっていうのも理解を難しくしている一因と言えます。
それに対してBIは国民全員一律給付ですので、僕のような調べるのが面倒という人間にでも簡単に理解できる。この分かりやすさはメリットと言ってもいいでしょう。
また社会保障を一本化するとなれば、社会保険や年金制度などにまつわる手続きが一切不要になりますから、必然的に手間が省けます。
ちなみに、
国民年金は国民全員(20歳から60歳)が納税しなければいけないもの(1階部分)で、厚生年金は会社に属している人間が納税しなければいけないもの(2階部分)。で、企業年金は簡単に言うと、会社が運営する年金のこと(3階部分)。
会社と従業員の間でやりとりされる年金とお考え下さい。
詳しくはこちら
行政にかかるコストが削減される
先ほどのメリットと似ていますが、BIを導入し社会保障を一本化すれば業務上の手続きが減るというメリットがあります。
例えばBIを導入すれば、申請者が生活保護を受ける資格があるかないかを判断するのに要するコストだったり、年金のデータをまとめたり支払い額を計算したりするコストだったり諸々の手間が省けます。
行政が担っている手続きが減ると、そこにかかる人間やコストが減りますからその分お金が浮く。
その浮いたお金をどうするかは置いといても、大規模な経費削減になるわけです。
全国民に無条件で納付される
上記のメリットを実現させるためには、全員に同じ額を給付するのが条件になります。
これがもし仮に、もらえる人もらえない人がいたり、金額に差を付けたりすれば、今までの社会保障制度とさほど変わりないので、根底から変えていくのなら全員一律という形にした方がメリットは大きいように感じます。
生活保護不正受給がなくなる
BIを導入すれば生活保護自体がなくなるため、不正に受給している人や本当に必要としているのにもらえていない人はいなくなります。
本当に必要なのにもらえていない人にとっては、額は大幅に減りますが一切貰えないよりはいいわけです。
逆に本当に必要で生活保護を現在受けている人にとっては額が大幅に減りますから、それによって生活できなくなる人も出てくることが予想されます。
その辺をどうするかはBIの課題の一つでしょう。これはメリットであるとともにデメリットにもなり得るということ。
ブラック企業が減る
BIの導入は働き方を一新させます。
なぜなら、毎月最低限の保証があれば無理してブラック企業や気に入らない職場で働き続ける必要がなくなるから。それによって条件のいい企業に人が集まるようになり、条件の悪い企業には人が集まらなくなります。
また、起業しやすくなったり本当にやりたいことにチャレンジしやすくなったりする可能性も高くなります。
これは一般の層や労働者から見ると、大きなメリットの一つです。
AIとの相性がいい
今後AI化が進み失業者が大量に出たときどうするかという問題は、先進国の大きな課題の一つ。
現行のやり方のままではどっちみち行き詰るわけで、何かしらのアイデアが必要になってきます。
そこでBIが代替案の一つとして挙げられるわけです。別にBIでなくてもいいっちゃいいですが、AI化との相性はいいと思います。
ただ一つ言っておくと、AIが人間の仕事を担うようになった時に、新しい仕事が生まれるのかどんどん置き換わっていくのかにもよるでしょうから、一概にメリットになるとは言えません。
AIがどれだけ人間の仕事を奪うかってところではないかと思います。
地方に移住する人が増える
BIが導入されれば物価の高い都会から物価の安い地方に移住する人間が増えるでしょう。
移住する人が増えれば、過疎化することで問題となる産業の衰退や維持費の増加が緩和されることが見込まれます。
家族が多いほど得をする
BIで一番得をするのが家族の多い人です。
BIは専業主婦や子供にも支給されるため、扶養家族が多い方がお得になるといえます。
例えば、会社員である夫・専業主婦である妻・子供2人という家族構成だった場合、1人当たり月々5万円のBIだと、その家庭には毎月20万円の入ることになる。
会社員の夫の月給が50万円だとするならそこにプラスして毎月70万円になるわけで、家族が多いほど貰える額は多くなります。
さすがにこれだけを見て、結婚する人が増えて少子高齢化が解決するとは言えませんが、今より結婚するハードルが下がることは容易に想像が付きます。
デメリット
労働意欲の低下や働かない人が出てくる
BIを導入するにあたって一番懸念されているのがこの問題です。
要は、ニートが増えたりクリエイティブに仕事をする人間がいなくなるという懸念。
個人的な予想としては、働かない人間は一定数出てくると思いますが、働き続ける人間は半数以上いると考えています。
額にもよるのですが、月数万で満足出来る人や働かないで家にいたり遊んだりして満足できる人間の数はそれほど多くないでしょうから、規模は小さくなるものの十分機能するんじゃないかなーと。
労働意欲だけでいうならむしろ上がるんじゃないかって思ってて。めちゃくちゃ楽観的な見方をすれば、ブラック企業が減って皆働きたい職場に就職出来るようになるんじゃなかなーと漠然と思ってます。
まぁでもこればっかりは実施している他国の実験結果を見たり、日本で試験的に導入してみる必要がありますし、もし導入して働かない人たちで溢れたとき、働き続ける人達だけで経済が回るのか検討する必要もあるでしょう。
また金額をいくらに設定するかも労働意欲に比例すると思います。この辺のバランスというか、詳細事項は課題の一つです。
寿命によって損する人が出る
BIで損をする人がいるとすれば、それは早死する人と言えるでしょう。
生涯貰える総額だけでいうと、BIはより長生きする人の方が多い給付金を貰えることになるので、短命な人ほど損をする制度といえます。
増税される可能性がある
社会保障や所得税などでBIの費用を集めたときに、支払う金額が足りないとなれば税金が上がってしまう可能性は高いです。
また月5万円として財源を確保しても、どこかしらでひずみが出て調整にかかる費用は予想するよりもっと多くなるはず。例えば生活できない人が予想より出てきたりとか、制度自体が継続出来なくなったときとか。
そのひずみが大きければ大きいほど、税率をあげるなどで帳尻を合わせるようになるので、一人当たりの負担額は大きくなってしまうということもあり得ます。
移民問題
BIを大々的に導入すれば、それを目的として他国からの移民が増えることが予想されます。
なので、その辺の線引きは予め明確にしておく必要があるでしょう。
給付する条件を、日本国籍を取得している人間とするのか、日本人だけにするのか、日本に住んでいる外国人も含めるのか、より詳細な取り決めが必要になります。
年金問題
BIを導入して年金制度を廃止しようとしても、今まで年金を払い続けてきた人は納得しないでしょう。
そうなってくると、今まで払ってきた分を計算してペイするしかないと思います。この時にどうしても手間やコストはかかってしまいます。
まぁ「今まで支払った分は忘れて下さい」と無理に押し切ればコストは削減できるでしょうが、反発されることは必至で、説得は難しいと思いますのでそれをどう解決するかという問題が残ります。
病気になったとき
BIの大きなデメリットの一つに、病気や怪我をしたときにかかる負担をどうするか、ということが挙げられます。
もし財源確保のために社会保険を廃止してしまった場合、怪我や病気になったときに個人が払う負担額は多くなるわけで、大病にかかってしまっても医療費が払えなくて治療が受けられないというケースが出てくることも考えられます。
そうなった時は別の制度を設けるか、民間企業で調整を図るかなど考えておいた方がいいでしょう。もしくは社会保険だけ残すという選択か。
どこからお金を集めるか
財源は本当に確保できるのか?という問題もありますよね。
そこで予算を主にどこから集めてくるのかというと、所得税・社会保障費・消費税・公共事業費などがあると思います。
例えばBIを実現するのに年間で100兆円が必要だってなったときに、所得税からすべて賄うのか、社会保障費から賄うのか、両方から賄うのかの大まかに3つの方法があるでしょう。
所得税を上げる場合だと、お金持ちも一般人も一律にして税率を上げるか、お金持ちから今より多く取るかすれば、100兆円は集まると言われていますが(詳しい計算はしていません、悪しからず)、高所得者だけから取るとなるとお金持ちが海外に流出してしまうので、全員一律が妥当だと思います。
社会保障費だけの場合だと、社会保障(約110兆)全てをBIに置き換える必要がありますから、社会保障制度を廃止して財源を確保するやり方になる。
で、両方から確保する場合だと、その割合にもよりますが、例えば50:50で集めるとして、所得税率を一律30%にし(すいません適当ですw)、年金だけを廃止して浮いたお金(約50兆)と合わせて算出するなど色々とやり方はあります。
ですが、どの場合でやるにしろ財源は確保できる計算になります。
ちなみに、相続税を100%にして財源を確保するっていうやり方もあります。これは「働かざるもの飢えるべからず」という本に書いてあったアイデア。
集められることが出来たとして継続できるか
集めることは出来たとしても、今度は破綻しないのかという指摘もあるでしょう。
ただこれに関してはある程度の計算は出来るのでしょうが、やってみて初めて分かることの方が多いと思いますので、一概にどうとは言えないのではないかと。
より正解がない社会になる
BIが導入されて大きく変わることの一つが、価値観。
「働かざる者食うべからず」という考え方に沿って成り立っている今の社会の在り方が、根底から覆されるわけですら、必然的に価値観は大きく変わっていきます。
若干薄れてきているようにも感じますが、今の社会は「仕事をして出世した人間が正解」「家族を持っている人間が正解」という価値観というか、目に見えない正解があります。
これがBIが導入されればなくなるわけで。
そうすると、漠然とあった正解がなくなったことにより格差が出来るんじゃないかなーと論を飛躍させることが出来るでしょう。何をやってもいいという状態に近づいたときにそれを楽しめる人間と楽しめない人間という風に、格差が出てくる。
これは人によればデメリットの一つです。
要するにBIとは正解を限りなくゼロにする制度だということ。
BIについて個人的に思うこと
BIはこれからの時代に適合するシステムであるとともに、仕事の在り方を大きく変える制度である
BIは「起爆剤」とか「一か八かの制度」とかよく言われますが、自分で色々と調べてみてそう言われる理由がよく分かりましたね。
そもそも、なぜBIがここまで議論されるようになったかというと、現行の制度、例えば年金や生活保護がスムーズに立ち行かなくなってきたから。
年金は支払う額より受け取る額の方が少なくなったり、若者の負担がどんどん増えてきたりしているし、生活保護は不正受給する人間がいたり必要な人に回っていかないなどの問題が生じてしまっている。
そんな中で、BIは現状を打破しうる制度として注目されているわけです。
もちろん、僕自身調べていく中でデメリットも結構あるなと感じましたので、BIに積極的に賛成というわけでもないのですけど、AIとの相性や仕事の在り方を大きく変える制度だということは間違いなさそうですから単純に面白いなと感じました。
現状を打破するものの大きな変革を必要とする。そういう部分でBIは起爆剤などと言われているのでしょうね。
試験的にやってみる価値はある
積極的に賛成しないと書きましたが、試験的にやってみる価値は十分にあると思ってます。
それでいうと最近twitterで見たのは、厚木で「ベーシックインカムハウス」という住むだけで毎月お金がもらえる賃貸物件を資産家の方が貸し出したという記事。
おそらく日本で初めての実験的試みだと思うんですけど、こういうのは面白くていいなと思いますね。
その結果によって、またBIの見方も変わってくるでしょうし。
そんな日本でもちょくちょく取り上げられるようになってきたベーシックインカム。個人的にもこれから注目していきたい制度の一つです。
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